妊娠前に受けておいた方が良い予防接種は?
妊娠を希望する女性のワクチン接種
●妊娠を予定している女性には、小児期からこれまでに接種対象となっているワクチンの規定回数の接種が完了しているかどうか、また感染症の罹患歴も合わせて、感受性者(免疫のない者)か否かを確認し、妊娠前に必要な追加接種を受けておくことをお勧めします。
●生ワクチンは、妊娠中の接種が原則禁忌であること、また接種後には一定期間(通常は1〜2ヶ月間程度)の避妊が必要なことから、妊娠前に余裕を持って接種を済ませたいワクチンです。
生ワクチンの対象疾患のなかで特に風疹は妊娠20週までの感染で児に白内障、先天性心疾患、難聴を主徴とする先天性風疹症候群(CRS)を引き起こすことで知られています。
(12週までが80%以上と高い発症リスクを示す)
不顕性感染なほとんどない麻疹や水痘と異なり風疹は感染者の15〜30%が不顕性感染となるため、罹患に気づかないまま周囲に感染が拡大していきます。
また、母体が不顕性感染した場合でも、CRSは発生するとされています。
対策は予防接種以外にないため、妊娠前の接種が強く推奨されるワクチンです。
●麻疹は、風疹の様に先天性異常のリスクは増加させないものの、流・早産のリスクを高める事が分かっています。
妊娠中に麻疹に感染したケースの30%前後が流・早産
に至ったという報告があります。また、妊婦が麻疹に罹患すると、重症化しやすいことも分かっています。風疹の抗体価の低い人は麻疹抗体価も低い傾向にあることから、接種を考慮する際には風疹単味ワクチンよりも麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を勧めるようにします。
●水痘は、妊娠20週以前の感染で先天性水痘症候群(四肢低形成、神経系の異常、眼球異常など)を起こしますが、その頻度は低く2%以外とされています。特に問題となるのは妊娠後期以降の感染で、母体の水痘肺炎は子宮の増大による呼吸機能の低下も加わって重症化しやすく、分娩前後の発症で新生児に感染する周産期水痘の致死率は30%に及ぶという報告もあります。治療薬の進歩に伴い死亡率は改善されているものの感染には注意が必要です。
●流行性耳下腺炎は妊娠初期に感染すると、流産のリスクが増加するとされてきましたが、最近では、これを否定する報告もでてきています。
経胎盤性にウイルスが胎児に移行はするものの催奇形性はないとされています。
新生児が罹患した場合でも軽症であることが多いようですが、周産期の母体の感染から児が肺炎や脳炎に至った重症例の報告もあります。流行性耳下腺炎は、疾患それ自体は重症化しにくいのですが、種々の合併症(髄膜炎、不可逆性難聴、思春期以降の感染で精巣炎や卵巣炎など)を起こすことでしられています。
出典『南江堂 エビデンスをもとに答える妊産婦・授乳婦の疑問92』
主任鍼灸師 木成