不妊治療

不妊治療

症状別に診る

周期が長すぎる方

排卵までの日数が長く、高温期が短い傾向にあります。
このタイプの方は、E2の値が低く、卵巣の働きが低下しています。体の力(とくに腎陰の力)をあげることが目的としていきましょう。

周期が短い方

20日~25日周期の方も同じく卵巣の働きが低下して、排卵までの日数が短くなっている腎陰虚タイプになります。このタイプは腎陰虚にのぼせが加わっておりますのでE2の値が低く、FSH高値になりやすいです。頭痛を伴う場合もあります。
腎陰の力を回復させ、のぼせも解消させなければ基礎体温は整いません。

多嚢胞性卵巣症候群

体を温める腎陽の力が低下した為に、体内に余分な水分がたまり卵巣周囲の血流が悪化し、排卵し難い状態です。補腎漢方薬と化痰薬を用いて改善します。
血液検査FSH<LHの場合、多嚢胞性卵巣症候群が疑われます。

LHサージがなだらかな方

排卵から高温期にかけて体温が急上昇せず、山なりの高温期タイプです。このタイプは排卵痛や排卵出血が出やすく、流れが鬱滞している体質になります。
着床し難い傾向が見られます。

免疫異常の方

抗精子抗体が陽性・顕微授精をしても授精卵が多核・異常分裂になり育たない方。
鍼灸と漢方薬で免疫を整えます。持病をお持ちの方でも結果を出すことが可能です。

体外授精に向けての方

質の良い卵胞を育てる=採卵して受精後育つ卵胞を育てる

採卵して胚盤胞まで育つ卵胞を育てるには、基礎体温(とくに低温期)が安定している状態が最低3ヶ月は必要となります。
採卵されても育たない、卵胞が空砲の方は採卵の間隔を伸ばされることがオススメしです。
当院に来られるまでに何度も採卵したが、すべて育たなかった40歳以上の患者様が当院に来られて、低温期が落ち着いた段階で採卵され、複数胚盤胞で凍結できた方が多数おられます。
上記の方の中には、基礎体温が整ってから採卵の日程が都合上合わず、人工授精で御妊娠された方もおられます。

卵巣機能不全・黄体機能不全

正常な卵巣

正常な卵巣

卵巣機能不全・黄体機能不全

卵巣機能不全・黄体機能不全

卵巣機能不全とは

卵巣が正常に働かなくなり月経周期が乱れる状態の事です。月経周期10日未満で排卵してしまう方・採卵しても空胞が多い方・胚盤胞まで育たない方これらの方は、卵巣機能が低下気味だと言えるでしょう。

黄体機能不全とは

「高温期が10日未満、または途中で体温が陥落する」「低温期と高温期の温度差が0.3°C以下」「卵胞期後期の子宮内膜厚さが6mm未満」「高温相中期のプロゲステロン値が10ng/mL以下」といった方は黄体機能不全の可能性があります。黄体機能不全では排卵後の子宮内膜の維持が難しくなる為、着床し難くなる・流産になるリスクが高くなります。

鍼灸によるアプローチ

東洋医学では、卵巣機能は卵胞を育てる力(腎陰の力)が必要です。⻩体機能不全は体の力(温める力)と密接に関係していると考えられています。その為冷え性の方は根本からの体質改善が必要となります。
のぼせ体質の方(頭痛が起こりやすい方)も要注意です。⻩体期はエストロゲン(低温期に盛んに分泌されるホルモン)の上に、プロゲステロン(高温期の⻩体ホルモン)が二重構造の様になっています。そのため東洋医学でも、⻩体機能を回復させるには低温期、即ち卵胞を育てる事が重要であると考えています。生殖器の力(腎の力)は35歳をピークに下降します。東洋医学では、この腎の力を補って妊娠の力を回復させる目的で行います。卵巣機能不全や⻩体機能不全の診断を受けておられる方は、鍼灸と生薬の組み合わせをご提案させて頂きます。

着床障害

着床障害

着床障害

※アメリカ国立研究センターNHIより

不妊治療を続けておられて、1年間妊娠陽性反応が出ていない方は着床障害の可能性があります。
排卵期に子宮の厚さに問題がなくても血流の悪い内膜には着床し難いです。
月経痛がある方は、子宮の血流が悪いと考えてよいでしょう。これらを改善しないまま、タイミング・人工授精・移植をされても結果はついてきません。
1年以上妊活を続けているにも関わらず妊娠陽性反応が出たことがない方は病院の治療と並行して鍼灸を受けることをお勧めします。
胚移植時に鍼灸をしたグループと、鍼灸無しに移植したグループとを比較すると鍼灸をしたグループの移植率が10%上がったとの研究があります。

鍼灸によるアプローチ

血流が悪くなった内膜に鍼灸によるアプローチを行います。移植後に子宮蠕動(収縮)がある患者様には、手足のこむらかえりの際に用いる治療法を用います。患者様から妊娠出産の喜びのお声を頂いております。

子宮内膜症・チョコレート嚢胞

子宮内膜症・チョコレート嚢胞

子宮内膜症とは

通常子宮の内側にある子宮内膜は、毎月、月経のたびに子宮の内側からはがれ落ち、月経血として腟から体の外へ流れ出ていきます。
しかし子宮以外の場所で増殖した子宮内膜は、出口がないため、腹腔内にとどまってしまいます。
よって病変部位に古い血液が溜まり、炎症や痛みなどが発生します。できやすい場所は(卵管、卵巣、ダグラス窩)などの子宮周囲です。内膜症の炎症は癒着し易いのが特徴です。

チョコレート嚢腫とは

子宮内膜症の一種です。子宮内膜の病巣が卵巣内にでき、出血を繰り返すことで卵巣に血液が溜まります。
そして体外に排出されることなく溜まり続けた古い血液は、ドロドロの茶色いチョコレート状のものとなり、卵巣を腫れあがらせます。これがチョコレート嚢腫です。進行すると 排卵が困難になります。

子宮内膜症の症状

基本的な症状は激しい痛みになります。子宮筋層内に内膜があれば、月経痛、腹膜 にあれば下腹部の痛みになり、内膜症のできる場所によって痛みの場所も変動することも。チョコレート嚢腫の場合、進行すると月経時以外でも腰痛や下腹部痛が起こります。 またダグラス窩周辺に癒着があると、性交痛が出ることがあります。

鍼灸によるアプローチ

基本的に活血化瘀(血流を改善させ、炎症を沈める方法)を用います改善の兆しのポイントは月経痛の軽減です。月経の状態が改善してきますと、採卵した卵胞が育つ確率や、移植した場合のご妊娠率も高くな ります。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)

多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群

  • ネックレスサイン
  • 排卵しにくい
  • FSH<LH

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は超音波検査で2〜9mmの小卵胞が一方の卵巣で10個以上確認できる多嚢胞性卵巣(ネックレスサイン)を伴う排卵し難い卵巣の状態を指します。

その他の所見としては、血中男性ホルモンが高値、またはFSH<LHの方などです。

クッシング症候群、副腎異常、体重減少性無月経の回復期など、多嚢胞性卵巣症候群と類似の状態を示すものは対象外です。

鍼灸によるアプローチ

体を温める腎陽の力が低下した為に、体内に余分な水分がたまり卵巣周囲の血流が悪化し、排卵し難い状態です。
補腎漢方薬と化痰薬を用いて改善します。

子宮筋腫

子宮筋腫

子宮筋腫とは

子宮筋腫良性の腫瘍です。30歳以上の女性の20~30%にみられます。がん(悪性の腫瘍)ではありませんが、貧血や痛みなどさまざまな症状の原因です。筋腫は卵巣から分泌される女性ホルモンによって大きくなります。閉経すると、逆に小さくなります。複数個できることが多く、数や大きさはさまざまです。大きさやできる場所によって症状が違ってきます。できる場所によって、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)に分けられます。
無症状の場合は治療の必要はありません。治療法には手術と薬があります。手術では子宮全摘術と筋腫だけ取る手術があります。子宮筋腫を根本的に治す薬は、今のところありませんが、薬で子宮筋腫を小さくし、出血や疼痛などの症状を軽くすることも可能です。

薬の治療には、月経を止める治療(偽閉経療法)が行われます。治療薬には毎日の点鼻薬(鼻からのスプレー剤)と4週間に1回の注射薬の2種類があります。この治療では女性ホルモンの分泌が少なくなるので更年期様の症状がでて、骨量(カルシウム)が減少するおそれがあるため長期(半年以上)の治療できません。ピル(経口避妊薬)を服用することもあります。女性ホルモン量の少ないピルを使うことで、筋腫が大きくならず、症状も楽になることがあります。

筋腫の医学的原因は不明です。
子宮筋腫の発生場所が内膜に近いほど着床障害や流産の原因となります。
不妊患者の15%を占めます。

鍼灸と漢方のアプローチ

漢方・鍼灸が適しているのは、にぎりこぶしの大きさ(10センチ以下)です。それ以上大きいものは外科手術をオススメです。 漢方と鍼灸で、骨盤内の血行不良(瘀血おけつ)を改善します。 体質により漢方薬も異なり、体質に合わせた漢方薬と鍼灸で血行を改善すると、子宮筋腫の主な症状である過多月経、月経困難症はかなり改善されます。瘀血が解消されることで増殖の抑制が期待でき、子宮筋腫が着床に影響がない場所にあるなら御妊娠も可能です。

キャッチアップ障害

キャッチアップ障害

キャッチアップ障害とは

排卵された卵胞は卵管采により卵管に取り込まれます。この卵管采が卵胞を拾い上げられない障害がキャッチアップ障害と言います。
卵管采は、卵管の先に存在していて手のひらを広げたような形をしている部分です。
検査では発見が難しく、タイミングや人工授精でなかなか妊娠にいたらない方は可能性があります。

鍼灸によるアプローチ

東洋医学では、気血の流れが悪く、気滞瘀血(きたいおけつ)タイプがなりやすい。排卵前後で痛みがある方はキャッチアップ障害の可能性があります。
鍼灸で局所の循環をよくする事で血流が良くなり、改善する可能性があります。